ずっとアニメが好きだった(9)
〜宝島〜
僕が今もなお愛してやまない作品「宝島」。放送開始は「さらば宇宙戦艦ヤマト」が公開されたのと同じ年、1978年の10月から。説明するまでもない、出﨑統・杉野昭夫の名コンビの手による名作中の名作だ。当時中2だった僕は夏に観た「さらばヤマト」の興奮冷めやらぬ状態で、この秋放送開始のアニメでもやはり「ヤマト2」と「999」ばかりに目がいき宝島はノーマークに等しかった(出﨑統も杉野昭夫もまだ知らなかったのである)。しかしある日の番宣スポットCMを目にしたことで興味を持ち、途中から観始めてあっという間にのめり込んでいった。わずか15秒のスポットCMですらその魅力は伝わってくるほどであったのだ。
そして、宝島はおそらく僕が最も大量の涙を流した作品でもある。途中から観たのにも関わらず、である。今も観る度に必ず同じシーンで、30年前と同じかあるいはそれ以上の涙を流してしまう。ほとんどが25話と最終回のシーンなのだが、今の方が少しはオトナで(当たり前か)、あの頃よりも少しは人生を知ったからこそ余計に泣けるのだろう。
僕はシルバーやグレーに憧れ、いつかはあんなカッコイイ男になりたいと思ったものだった。だけど、なりたいと思うだけでなろうとしたわけではなかった。いつもいつも楽な方に流され、戦うことを避け続けてきた。そしてつまらないオトナになった。
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「シルバーにとって一番大切なものはなに?」
宝島からの帰途、海賊の親玉シルバーは囚われの身となり船倉に閉じこめられていた。シルバーに憧れ、信頼し、裏切られ、なのに憎みきれないでいるジム。彼はおとなしく捕まったままでいるシルバーに失望していた。
そんなシルバーにジムはコーヒーを差し入れ、シルバーにどうしても答えて欲しいことがあると、上のような質問をしたのだ。
シルバーは答えた。
「今はこの一杯のコーヒーさ」
「まじめに答えてよ」と怒るジム。
そのジムに対しシルバーは「まじめさジム・・・今日という日のこの瞬間はお前の入れてくれた一杯のコーヒーだよ・・・しかし明日になりゃ変わっちまうだろうな」と言い、そして続ける。
「俺にとって一番大切なものってのが俺自身まだわかんねぇんだ。それを探すためにこうして毎日を過ごしてる。フリントの宝探しに血道を上げたこの10年は楽しかった宝を見つけりゃ、その『何か』が分かるような気がしていた。けど、宝は宝以外のなにものでもなかった。俺の『何か』ではなかった」
そして遠くを見つめるようにつぶやく。
「あるよなぁ、ジム。どっかで俺が、俺の一番大切なものってやつに出会える時があるよなぁ・・・そうでなけりゃ、あんまりさみしすぎらぁ」
(第25話 「潮風よ、縁があったらまた逢おう」)
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僕はもういい歳をしたオヤジだ。宝の地図だの海賊の財宝だのを信じるには歳を取りすぎたし、オートロックのマンションじゃビリー・ボーンズ(主人公ジムに宝島の地図を与えた男)も尋ねて来やしない。ポストに入っているのは宝の地図どころか、クレジットの請求かゴミ箱へ直行するチラシくらいのもの。そして明日もまた同じ道をたどり仕事に行き、疲れて帰ってくるだけだ。
「お前の大切なものは見つかったのか?」
シルバーの大きな瞳が僕に問いかける。
「ムリだよシルバー、あんたですら簡単には見つからなかったんだろ?」
僕は答える。
けれど僕もきっといつか自分の、自分にとっての一番大切なものに出会える日が来るんだと信じて生きている。ちっぽけな冒険すらない狭い国に閉じこもったままの人生だけれど、シルバーやグレーのようなカッコイイ男には程遠いけれど・・・。
「そうでなけりゃぁ、あんまりさみしずぎらぁ」
眠れぬ夜に僕はふとつぶやいてみた。
やっぱ僕じゃカッコつかないよ、シルバー・・・。
←ロマンアルバム。杉野氏の絵を同じ記事に掲載するとはイイ度胸だな、俺。
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