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2009年6月24日 (水)

ずっとアニメが好きだった(17)

赤毛のアン(3)〜アンの声優たち〜

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前回のアンの記事から随分と間が空いてしまったが、今回は締めくくりとしてアンに出演された素晴らしき声優陣について簡単に触れておきたい。

アンは日常的な会話を主体として物語が進む。ロボットアニメのような叫びもなければ魔女っ子もののように呪文をとなえたりもしない。その分当然、声優さんたちの芝居についても、より自然で高度なことが要求される。それは作画上も難しいものだったと思うが、同じように声だけで日常的な芝居をするというのはかなり大変だったに違いない。アンのムック本を読むと、アフレコ時にはほとんど絵がなく自分のセリフの間は線を見てしゃべっていたという(役柄によって線の色が分かれており、例えば「赤の線=アン」であれば、赤い線が画面に見えている間はアンの声優さんがセリフをしゃべる。絵の完成が間に合わない場合はよく行われていた方法。最近のアニメがどうなのかは知らない)。声優さんたちは絵コンテで事前に画面のイメージを説明されていたというが、それでいてあれほどに見事な芝居がよくできたものだと感心する。

アンの主なキャストをざっと紹介しておくと・・・
アン=山田栄子、マリラ=北原文枝、マシュウ=槐柳二、ダイアナ=高島雅羅といった面々がほぼレギュラーといえる人たちだ。マリラの親友、リンド夫人には大ベテランの麻生美代子、そしてアンの友人たちに、高木早苗、高坂真琴、堀絢子、青木和代、塩屋翼、井上和彦といった面々。アンの人生に大きく関わるステイシー先生に鈴木弘子、現代的な若い牧師に曽我部和行、ダイアナの母に武藤礼子、妹に小山まみ(現:茉美)、そしてナレーションに羽佐間道夫といった実力のある人たちが配されている。

僕にとってアンの声優陣で最も印象深いのがナレーションの羽佐間道夫とマリラ役の北原文枝である。
子供番組に男性ナレーションを起用するのは異例だったが、子供に読み聞かせるような「ですます調」ではないナレーションは、作品の対象年齢を上げ大人の鑑賞にも耐えうる格調高いものにしていた。アンのナレーションは極めて第三者的であり、アンやほかのキャラに寄ったものではなかった。つまり羽佐間のナレーションは高畑監督の分身であったのだと思う。高畑の演出姿勢が羽佐間のナレーションとして作品世界を表していたのだと僕は思っている。コメディー映画の吹き替えのイメージが強い羽佐間だが、落ち着いた品の良い淡々とした語り口はさすがであった。

アンのキャストはその誰もがほかに考えられないくらい見事にぴったりな人ばかりだったが、中でもマリラ役の北原文枝はもう絶対どんなことがあってもほかの人ではダメ!というくらいに素晴らしかった。
マリラというキャラは作中では最も複雑なキャラだ。保守的で頑固だが、責任感がありしっかり者で家事全般に長けている。オシャレとは縁遠いが清潔であることを大事にしている。アンに対して深い愛情を抱いていても、それを簡単に表すことはない。厳格にしつけをするが、融通が利かないほどでもない。そんなマリラの心情を場面場面に応じて演じ分ける北原さんの演技力はまさに「圧巻」のひと言である。そしてアンが成長するにつれて丸くやさしくなり、そして老いてゆくマリラの変化を実に自然に巧みに演じていた。小さくつぶやくようなセリフも、アンをどやしつける声も、諭すような話し方も、マリラという女性が実在したならきっとこんな風に話すのだろうと思えた。いや、マリラが実際に話していると思えるほどだった。
北原さんはアニメの出演経験がほとんどなかったらしい。そして、アンの録音現場では絵がほとんど完成していなかったことが良い方に作用したのではないかと思う。絵によるキャラへの先入観を持たず、また絵に合わせるというテクニックを考えずに芝居に集中できたことが、北原さんの良さを遺憾なく発揮する結果に繋がったのではないだろうか。

もちろん、この2人だけでなく全ての出演者が素晴らしかったことは言うまでもない。
アン役の山田栄子は初のアニメ作品にして主役という大役だった。僕は「なんて変わった声なんだろう」と思った憶えがある。決して美声ではなく、少し鼻にかかったような声で、しかし妙に印象に残る声でもあった。それまでに聴いてたどんな声優の声とも違っていて、それがまた個性的なアンののキャラデザインに妙にマッチしていて、あまり適切な言葉は浮かばないが、なんていうか「初めて観るタイプのアニメに出会った」ような不思議な感じだった。山田は決してこなれた感じではなかったが、その硬さが逆に物語当初のアンの不安な心境にマッチし、アンの成長と山田の声優としての成長がシンクロしていたように思う。
マシュウ役の槐(さいかち)柳二は、当時すでに50代ではあったがしわがれ声のため若いころから老人役が多かったという。おなじみとなったマシュウの「そうさのう・・・」という口癖にはその場面場面で微妙なニュアンスの違いがあり、槐はそれを実に見事に演じ分けていた。口数が少なく照れやのマシュウはセリフにならないセリフというか、息をのんだり言葉に詰まったりということも多く、その息遣い一つ一つが見事しか言いようがなかった。優しさと慈愛に満ち、しかし頑固な一面を持ったマシュウという人物を見事に演じきった槐さんが、あの「レレレのおじさん」だったというのを知ったときはビックリしたものだ。

アンの放送終了後1年も経たないころ、ショッキングなニュースがあった。それはマリラ役の北原文枝が急死したというニュースだった。自宅の窓をふさぐ木の枝を折ろうとして窓から落ちたという。「アン」での芝居が記憶に新しい時期だったので、本当にショックだった。
「アン」が始まったころ、僕は北原文枝という名前は知らなかった。だが、どこかで聴いた声だとは思っていたら、キャスティングを見た母が「奥様は魔女」でサマンサの母親である魔女の役をやっていたということを教えてくれた。ああ、なるほどあの声かと納得した。小さいころに親しんだ声の主が、今こうして大好きな作品に出演しているという、そのことだけで僕は北原さんに対して一気に親近感を持つようになっていたのだ。
亡くなられた当時、まだ60歳。「アン」の後にも、もっと多くの作品に出演されたであろう事を考えると本当に残念でならない。

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北原の急死は当時、新聞でも大きく取り上げられた(1980年10月5日付の読売新聞)。女優としての知名度が高かった証だろう。


「アン」について3回に渡って触れた。ちょっと書きすぎだとは思う。たまたま最近再見する機会があったためさらに印象が強かったためだろう。だけど、改めて観てやはり後世に残る名作であるという思いはますます強くなった。そこでちょっと当時のアニメージュを見返してみた。
「アン」が放送された1979年のアニメは名作揃いだということは再三書いているが、当時のアニメージュでは始めて「アニメ・グランプリ」として読者投票を行っている。1980年2月号で結果が発表されているのだが、「アン」は20位にも入っていないことに驚いた。1位の「ガンダム」と2位の「999(映画)」は当然としても、この名作が20位にも入っていないとは・・・当時のアニメージュの読者層の好みがいかに偏っていたかということになるのだろうか?
アニメージュも放映開始前後は、割と頻繁にアンを扱っていたが後半になると特集記事はほとんどなくなっていった。当時のアニメファンが飛びつきそうな話題が中心になっていたようだ。
ブームに乗っかるような作品ではなかったが、観た人の心に何かを残した作品だったことは確かだろう。

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コメント

北原さんのマリラ、大好きでした。
そして、奥さまは魔女のママも大好きでした。
安部徹さんの奥さまというのも渋かったです。
安部さんと北原さんの夫婦の会話…
う~ん、渋すぎる…
事故でなくなったのは、わたしにもとてもショックでしたよ。

投稿: かめこ | 2009年6月25日 (木) 20時35分

かめこ様
今回見直してみて、改めて北原さんのお芝居の素晴らしさとマリラというキャラの魅力を再発見した思いです。北原さんがどのようにマリラを演じられたのかを知りたかったです。

投稿: AKIRA | 2009年6月26日 (金) 08時21分

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